松永成立物語 [マンガ]
近頃だと昨年末、週刊少年サンデーが『香川真司物語』を読み切り掲載したことがあったが(作者は『BE BLUES!』の田中トモユキ)、日本代表の看板選手ともなれば実録マンガの題材として取り上げられることも珍しくない。
一方、もうひとりのビッグネーム・中澤佑二ももちろんマンガになっていて、こちらはスポーツマンガの大御所・塀内夏子による『中澤佑二物語』が"06年より週刊ヤングマガジンにて不定期掲載されていて、単行本化は'09年。こちらはトリコロールワンでも販売していたので、覚えている人も多いはずだ。
がしかし、マリノスで最初にマンガになったのは多分この人。現在のGKコーチである松永成立だ。作者は『中澤佑二物語』と同じく塀内夏子。連載されたのが'94年の週刊少年マガジンのゴールデンウィーク合併号。ドーハの悲劇からはちょうど半年ぐらい。W杯アメリカ大会を目前にした時期だ。そのタイトルは『松永成立物語』。松永の少年時代から始まり、ドーハの悲劇までをドキュメントタッチで追う物語だ。
名門・浜名校での当時珍しかったGK専門コーチ・宮司との出会い。加茂周に抜擢され新人ながら正GKを任されるも、実業団の壁にぶち当たる日産自動車時代。人との出会いを重ね、松永は代表GKの座へと登ってゆく「試合に負けたらGPのせい!勝ってもFWばかりヒーローで」と、GKというのポジションのむくわれないやるせなさを宮司にぶつけるシーンだったり、日産時代自信を失った松永が思い浮かべる、ゾーンプレスを志向する加茂故の「…ゴールにへばりついているだけのGKはいらん これからはどんどん前に出ていけるGKが必要なんや」なんてチャレンジを促すセリフはいいよなぁ。塀内先生の作品において、挫折と泥臭さストイックさは重要なモチーフであって、決して派手ではないが代表のゴールを守り続けたシゲさんの半生は、まさにハマるものだったんだろう。
物語は、ドーハへと続くW杯アメリカ大会アジア予選へと続いてゆくのだが、印象深いのがアジアカップ準決勝の中国戦だ。松永は相手選手を蹴り上げ1発退場となり深い苦しみを味わう。やはりどうしても浮かんでしまうのが、天皇杯で飯倉がジュニーニョを吹っ飛ばして退場してしまったあの試合だ。松永は、泣いてチームメイトに謝罪した飯倉に、「お前なんかまだヒヨッコ」だとなぐさめたと伝えられている。当時ネットがバカみたいに騒ぎ立ている中で伝えられたシゲさんのエピソードは、同じ苦しみを知る者のどこまでも優しい言葉に感じられて今でも深く印象に残っている。
「…跳べるものなら跳んでいました アメリカが……目の前にあったんですよ」。日本サッカーの大きな分岐点となったあのコーナーキックでこの物語は幕を閉じる。結末は決してハッピーエンドじゃないのだかれど、挫折を繰り返しながらも、それでも立ち上がるアスリートははやっぱりかっこいい。僕は塀内作品の中でも、この『松永成立物語』が一番好きだ。
この『松永成立物語』は、単行本化はされていないが、『Jドリーム飛翔編』の第10巻に収録されている。結構古本で探すのも難しくないので、目にとまったら是非。
ところで、トリフェスのたびにシゲさんにサインしてもらえないかと、この10巻をカバンに忍ばせて行ってるのだけれど、今年もボレーの虎を見ているうちに時間が過ぎてもらえなかったんだよね。ファンサて、コーチのサインももらえるものなんでしょうか?
ではまた! アディオス!!
Jドリーム飛翔編 (10) (講談社コミックス―Shonen magazine comics (2496巻))
- 作者: 塀内 夏子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/12
- メディア: コミック
こういう感じの漫画で、ロッシのがあったと思うんですが、探しても見つかりません。
サンデーかマガジンだったんですが、誰か知りませんか?
by ポー (2016-11-14 07:13)
書き間違えました、バッジョです
すみません
by ポー (2016-11-14 07:25)
この記事からアイデアを得ていることは印象的です。
現時点での議論から
by Archer (2018-02-28 22:30)