さよならフットボール [マンガ]
W杯優勝を気に、お茶の間では男子以上といってもいいぐらいの人気者となった〝なでしこジャパン〟だが、今回紹介するのは、そんな女子サッカーブームのちょっと前の’09~'10年の間『マガジンイーノ』に短期連載されていた、女子サッカー選手のお話。
この『さよならフットボール』の主人公は、抜群のテクニックとセンスを持つ中学2年生のサッカー部員・恩田希。彼女が、男子しか出られない新人戦に出場するため奮闘するという前半部分が第1巻の主なストーリーである。
物語はコミカルに、そして青春丸出しで進んでいくのだが、恩田が〝なぜ男子の公式戦に出たいのか?〟っていう部分がタイトルの〝さよなら〟ともつながっていて、めちゃくちゃ切なくていい。
彼女が新人戦に出たい理由とは、小さなころから一緒にサッカーをやっていた子分のナメックと決着をつけるため。かつては泣き虫で恩田よりも全然ヘタクソだったナメックも、成長期の中学生。すっかり体も大きくなり、昔はまるでかなわなかった恩田に「男というだけで俺はーお前を超えたレベルにいるんだ」と言い放つ。一方、恩田もまたスポ少から一緒にサッカーをやってきた男子たちを相手に、フィジカルが理由で自分のプレーが通用しなくなりつつあることを目の当たりにし、男子と一緒にサッカーができる時間がわずかしか残されていないことを気づいている。つまり、ナメックと決着をつけるのは今しかないのだ…。
少女から、女性へと成長したがために訪れる最後のフットボールの時間。こんなに切なくてムズムズする青春像てあるだろうか?
作者の新川直司は、現在『月刊少年マガジン』で『四月は君の嘘』を連載中。音楽をモチーフに、爽やかな青春ストーリーを描いている。もう、思春期というモチーフはこの人の真骨頂でまあクサいと言えばクサいのだが、男性未満、女性未満、そして恋愛未満みたいな描写が本当にうまい。もちろん、『さよならフットボール』でも、その思春期丸出しな感じはあって、恩田を取り巻く男子のチームメートが恋愛目線で彼女を見守っているのに、本人はサッカーのことばかりでまるで気づいていないなんてのがさりげなく描かれている。そんな部分が実に甘酸っぱくて青春物としても相当読ませる。
一方その〝アジ〟でもあるクサさがサッカー方面で出ちゃっている部分もあってだね。甘酸っぱい青春ストーリーにクライフだベッケンバウワーだ、彼らの名言がバンバン登場し、中学生が「見せてやろうぜ極上のトータルフットボールを」なんて言い出す違和感たるや。君ら、ダイジェスト映像でしか動いているクライフ見たこと無いでしょ? ていう。ちなみにアラフォーの僕だって、ジョルディ・クライフしか動いているところは見たこと無いのだよ(笑)
最後にちょっと悪口を書いてしまったが、実は2巻で、例えば1巻で多く登場する、〝フィジカルVSテクニック〟の2項対立だったり、〝フットボールはパスゲーム〟なんて能書きや上に書いたクサい部分も、全てを含めてサッカーっていいよね!! というなんかもうグッとくるしかない展開が待っているのだが、それはまた今度。
実は2巻がどっかいっちゃって見つからないだけだったりするんだけど。てへっ
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